星野タイガースのスローガン「ネバー・ネバー・ネバー・サレンダー!」に元ネタがあるとするとそれは何か? SF(パロディ)映画の傑作「ギャラクシー・クエスト」の決めゼリフ「ネバー・ギブアップ、ネバー・サレンダー!」と何か関係があるのだろうか? という記事が香雪ジャーナル(2/11)にある。あの標語を聞いた時、私も同じ疑問を持った。「ギャラクエ」ファンは、皆同じこと考えたんじゃなかろうか。
ググると、阪神のスローガンの元ネタは「ギャラクエ」だ! と断言しているページがあるのだが、「ギャラクエ」を上映する映画館の番組宣伝ページ(2003年8月)なので鵜呑みにはできない(笑)。
私はスローガンの由来については何も知らないのだが、元ネタがあるとするとチャーチルの名言「ネバー・ネバー・(ネバー・)ギブアップ」が元ネタである可能性の方が高いように思える。スローガンを決めたのが誰なのかは知らないが、球団標語の決定権を持つエライ人って箴言・名言が好物なような気がするので。(偏見)
* * *
上で「チャーチルの名言」ともっともらしく書いたが、私はこの言葉をヤマタクの引用(02年2月国会)で初めて知った。2年前は「へぇ〜」と思ったきり調べもしなかったのだが、今回は検索してみた。これは歴史的名演説だったのだな。ただし、「けして、けして、けして諦めるな」というたった一言の演説だったという誤解があるが(*)
実はもっと長いもので、また「give up」という成句は使われておらず実際にはほぼ同義の「give in」や「yield to」が使われていた、らしい。
The Churchill Centreの引用句に関するFAQには、
「Q.チャーチルがケンブリッジかオックスフォードの卒業生に向けてやった『Never give up,Never give up,Never give up』というシンプルで短い演説を探してるんだけど?」
「A.この問い合わせが一番多いんだ。その演説は1941年10月のハロウ校でのもので『Never, never, in nothing great or small, large or petty, never give in except to convictions of honour and good sense. Never yield to force; never yield to the apparently overwhelming might of the enemy.』というヤツだね。演説の完全版は以下の文献に収録されてるよ」(訳は適当)
というQ&Aが劈頭に掲載されている。端折った引用が繰り返されるうち、簡潔なフレーズの形で“名言”化して広まったんだろうなあ(ただし、上で引用した英文でググると正確に引用しているページも多数見つかる)。
(*)
ヤマタクの引用が誤解の典型例。02年2月、衆院の各党代表質問で自民党幹事長(当時)・山崎拓はこの“名言”を引用して小泉首相を激励したが、これを短い一言演説だったとして紹介している。
第二次世界大戦後初めてケンブリッジ大学の卒業式に招かれた、当時の英国の首相ウィンストン・チャーチルは、静まり返る中、卒業生全員に向かって、ネバー・ネバー・ギブアップ、ネバー・ネバー・ギブアップ、ネバー・ネバー・ギブアップ、それだけを叫んで、はなむけの言葉としました。熱弁を期待していた卒業生たちはあっけにとられましたが、やがて式場は歓声に包まれ、割れんばかりの拍手はいつまでも鳴りやまなかったと伝えられております。
小泉内閣の支持率の低下は一時的なものであり、総理の信念である「聖域なき構造改革」に対する国民の全面的な支持は今も変わりないものと信じます。
我が自由民主党は、今後とも、公明、保守両党の御支持と御協力を得て、改めて小泉構造改革内閣を全力で支援していく決意を表明し、質問を終わります。
小泉総理、ネバー・ネバー・ギブアップ。(拍手)
出典:第154回国会 本会議 第6号(平成14年2月6日(水曜日)) (衆議院)
長さに関しては、一言演説だったということにしたほうが劇的なのでわざと“話を作った”とも考えられるが、ハロウ校がケンブリッジに、戦中(1941)が戦後に、「敵(ヒトラー)に屈服するな」という檄が「はなむけの言葉」に、と、中身もかなり変態変容している。ヤマタクはチャーチルの実際の演説についてよく知らないまま引用した、に親子丼3杯。
02-04 追記
チャーチルの演説原稿については14日の項を参照されたし。