近況雑談の過去ログ42(2002年12月)


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田口ランディ&盗作検証本関連の雑談は 田口ランディ盗作疑惑に纏めた。 

 2002-12-31  Windowsが壊れた

 マシン環境をクリーンで安定したものとし、アプリケーションも最新版にアップデートしてフレッシュな気分で新年を迎えることとした。

 なんてな。
 一昨日深夜、下の29日の雑談メモをFTPでアップロードした直後にマシンがフリーズ。再起動したところシステムがクラッシュしてやんの。WindowsがSAFEモードでさえ立ち上がらない。プロンプトDOS モードでレジストリやシステムファイルの修復などあれこれあがいてみたが駄目。ハードディスクのフォーマット・Windowsの再インストールをする仕儀と相成った。バックアップの書き戻しと環境再構築で丸一日潰れてしまった。

 リカバリ・ディスクでの再インストールに失敗した時にはもう半泣きで(メーカー純正のリカバリ・ディスクでエラーが出たら、泣くぞ、大人でも)、富士通のお嬢さんにテレホンしたりファイナルアンサーだったりしたのだが、今はもう雑談書きなぐってネットに繋いでページ更新できるところにまで辿り着いている。過ぎてしまえばあれもこれもいい思い出だ。窓の外ははや明るい。2002年最後の夜明けだ。自然と笑みがこぼれる。こ・ぼ・れ・ま・せーん。

 ことのついでにMSIEを最新版(ver.6)にアップデートした。自分の作ったページを閲覧してみて愕然。あちこち表示が崩れている。特にNステ語録が悲惨だ。早いとこ修正したいのはやまやまだが、まだ環境整備が済んでいないので後日。後日後日といってるうちにもう年越しだぁね。


 では皆様、よいお年を!


*  *  *

 21日の項に追記(Xboxのイギリス版CMはあちらでは放送自粛)。


追記 (03-05-06)
 訂正:プロンプトモード → DOS モード


 2002-12-29  メモ(日テレ「Bワイド」サイト)

 WEBに上げるつもりで書いたのに公開する気になれないということがしばしばある。Nステの特集「北朝鮮・政治犯収容所」の感想はしばらく寝かせておく。


 ずっと「工事中」だった日テレの「ブラックワイドショー・第三惑星放送協會」のホームページがようやくリニューアルしたと思ったら、連絡先(メール・住所)の告知だけなんでやんの。5ページも使ったもったいぶった表示方法が番組本編同様、人を食っている。WEBではありふれた手法ではあるが。



 2002-12-25  田口ランディの盗作に関するコラム@asahi.com

 この項は田口ランディ盗作疑惑に纏めた。



 2002-12-24  別に

 2週間ほど前からビデオデッキが不調。とりあえず録画を優先して録画済みテープの見直しは先送りにしていたのだが、先週で年内のNステが終了したので溜まっていた未見テープを処理。

 殴り書きのメモでは不明な部分を録画で確認して18日のNステの特集「北朝鮮・政治収容所」の感想を書いていると脳内ラジオが「クリスマス・イブにあなたは何をしていますか幸せですかラブはありますか?」と囁く。ラブラブラブ。らぁぶ! わかった。やめる。ということでこの件は後日。

 トップページをクリスマス・バージョンに模様替えしようかとも思ったのだが「平和だよねハッピーだよね」と、また脳内で誰か囁き始めたので中止。

 今夜は「明石家サンタ」でも見るか。……おや、静かだ。これなら文句はないらしい。



 2002-12-21  ニュース番組のW杯回顧 /CM大賞@News23 (12-31追記)

 W杯「日本 vs トルコ」戦を振り返る特集をNews23とNステが1日違いで放送した。

 19日のNes23は金子達仁をゲストに招き、トルコ戦の敗因を、ベルギー戦での失点=同点劇でトルシエの看板であるフラット3が選手の自主的判断で放棄されてしまい、チュニジア戦でのFW入替えが当たったのに気を良くしたトルシエがトルコ戦で未経験のワントップ布陣という自己主張の挙に出てチームの連携が崩壊したため、と分析。この説(トルシエ批判)はW杯期間中にも目にしたものだが、当否はさておき明快。自分の思うように動かぬ選手たちを口汚く罵り、愚痴をこぼすトルシエの声(集音マイクで拾われたもの)が印象的であった。

 対して20日のNステのW杯回顧最終回は、失点の分析(セットプレーに対してマンツーマンでなくゾーンで守ろうとしたためユミト・ダバラがフリーに)はわかりやすかったが、失点後に有効な手を打てぬまま終わった日本の作戦・戦術へのツッコミは無し。ディフェンスを1人削って攻撃にまわすことも考えたが、という宮本選手の証言を挿入して暗にトルシエの無策をほのめかすのみ。敗色色濃くなるなか冷たい雨に打たれ日本サポーターの声も小さくなり云々という情緒的なナレーションが印象に残る纏め方であった。こういう回顧ももちろんありだが、News23の辛口分析に比べちと物足りないものであった。

 2002W杯を総括する上で韓国の大活躍は落とせないし、韓国の躍進に焦点を当てるなら「誤審問題」は避けて通れない。しかしNステの連続回顧特集は(韓国に1夜を当てたにもかかわらず)結局この件には一切言及しなかった。他局ではどう総括していたんだろう。


*  *  *

 20日のNews23は天野祐吉を招いてCM大賞ネタ。最近の私のお気に入りの2つ、サッポロ黒ラベルの「Love Beer? な男」(要JavaScript)第5弾「路地裏の男達」とリクルートのホットペッパーも取り上げられていた。「路地裏の男達」については先月16日に書いたので略。

 ホットペッパーのCM(関西版)が東京で流れ始めたのは1、2カ月前あたりかな。News23では「たべました編」のみだったがわずか15秒なんだから「スゴイやん編」も流してほしかった。天野氏の解説によると映像は既存の洋画のワンシーンを流用しているように見せているが実はあの映像もCFのために新たに製作されたものなんだとか。映像とセリフのミスマッチを作り出す素材選択のセンスがスゴイと思っていたのだが、素材自体がオーダーメイドだったとは。この舞台裏は知らないままの方がよかったかも。

 数本ずつ纏めてCFを流した後、筑紫哲也らキャスター陣と天野氏が寸評するというスタイルだったが、商品名を口にしないという縛りがあるらしく一部やりとりがギクシャクする場面があって可笑しかった。CM特集でCFの実物を流してるんだからこの特集内では商品名アリにすりゃいいのに。

 海外作品も数本取り上げていたが、Xboxのイギリス版CMがブラックで凄かった。母親の股間から射出された赤ん坊が産院の壁をぶち破り、高速で弾道を飛ぶうち少年から青年へとみるみる成長し、最後は老人に成り果てて墓場に墜落して終わり。「ゆりかごから墓場まで」ならぬ「産道から墓場まで」(笑)。「人生は短い もっと遊べ」ったって、あんな一生ではゲーム機で遊ぶヒマもない。


追記
(12-22)
 Xboxのイギリス版CMは以下のサイトで見られるとの情報を貰った。動画のダウンロードも可能。(要JavaScript、要Flash)

 ・ Xbox

(12-31)
 Xboxのイギリス版CMは放送禁止になっていたんだそうな。詳しい記事(コラム)があったのでリンクしておく(リードには放送禁止とあるが、抗議を受けて放送自粛らしい)。

 ・ 禁じられたXboxのCM、何がまずかった? (6/14、ZDNN



 2002-12-18  Nステ「トルコ・サッカー」 /検索メモ (12-19追記)

 明日のNステのW杯回顧第3夜はトルコ編。予告VのBGMはジェッディン・デデン。


(12-19 追記

 ヨーロッパとアジアの接点に位置し、EUには加盟させてもらえず経済も文化も冴えない。鬱屈のはけ口をサッカーに求めるトルコの事情。「ブラジルにはカーニバルがあるが、トルコにはサッカーしかない」というトルコ人の言葉が印象的な小特集であった。

 Vの時間が短く、W杯最速記録を塗り替えたハカンの試合開始11秒ゴール(韓国との3位決定戦)や予選リーグから大活躍したハサン、イルハンのヒールリフト、スーパーセーブを連発してカーン以上とも評されたGKリュシュトゥ等々のプレーが割愛されていたのは残念。

 ドイツ出身者がトルコ・サッカーにもたらした「秩序」、チームプレーの象徴として韓国戦での2点目、イルハン→ハカン→イルハン(ゴール)のパス回しを取り上げていた。これはドイツ育ちのイルハンと篤信家でチーム内の保守派旗頭ハカンのコンビプレーであった点でも象徴的だったのだが、特集は文化(宗教)を巡るチーム内の不和については言及せず。

 V編集に不満あり。上記の2点目ゴールを決めたイルハンが駆け出す場面からチームメートたちと抱擁する場面に繋げていたが、その間の大事なシーンが省略されていた。イルハンが一目散に走り寄った先には、ピッチに座り込み両手を広げてイルハンを祝福するハカンの姿があったのに。あの2人の抱擁シーンを落とす手はない。

 ・ 韓国 vs. トルコNumberWeb 世界戦記2002
 ・ 2002 FIFA World Cup Photo Gallery
 ・ 2002 FIFAワールドカップ フォトギャラリー


*  *  *

 WEBに接続して以来、折々に検索している事柄がある。その一つ、ある人物に関しては1年ほど前に「過去の出来事」に言及している日本語ページを見つけていたのだが、先日、ようやく「その後の消息」情報のある英文ページをGoogleで複数発見した(情報源は同じで1996年刊行の書籍)。数行の「近況」を繰り返し読んで感慨にふける。
 英語での検索は以前何度も試したはず、スペルが違っていたのかとよく見ると、これらのページは今年作成されたものであった。WEBには続々と情報が追加されつつあるのだなあ。

 (AltaVistaAllthewebTOCCでも当該ページがヒットするのを確認。InfoseekgooLycos JapanNaverはダメ。ヒット0件。)



 2002-12-15  北朝鮮の実態特集連発@Nステ

 12日(木)のNステは「南浦港の謎」(ミサイル・ビジネス)に続いて「朝鮮人民軍の実力」小特集。元人民軍中佐・沈信福の証言には新味無し(韓国への侵入トンネル掘り、軍事パレードの訓練が大変、外国からの援助食糧は人民軍に渡る、軍の装備は古い・足りない、等々)。

 途中、人民軍兵士の“勇姿”の映像(北朝鮮製)が挿入されていた。これは本来、愛国心を煽る国内向け宣伝映像なのだが、顔の前に掲げさせた岩石を巨大ハンマーで砕く見世物的競技や女性兵士が大勢の暴漢を瞬く間に叩き伏せて笑顔で歩み去る活劇など、鍛練の成果を誇示する手法が幼稚で喜劇になっているシロモノ。
 同じ映像を日テレでは3週間ほど前から毎週、お笑いネタ扱いで放送している(土曜深夜の「ブラックワイドショー」)。残念ながら見逃してしまったが、昨夜は「北朝鮮兵士ベスト5」なんてのをやったらしい。扱い方としては日テレの「Bワイド」の方が適切かつ健全である。

 13日のNステの特集「北朝鮮国家安全保衛部の暗部」は金正日の冷酷非情ぶり、独裁者の地位安泰のために監視組織である保衛部も含め国民全体が監視される密告社会・北朝鮮の実態を暴く亡命者・金永日の証言をもとにしたもの。先月20日の「金正日総書記の極秘指令」と同様、韓国国家情報院の提供情報に丸乗りしたような内容であった。
 金氏は単なる脱北者ではなく元保衛部幹部であり、現在は韓国の国情院に“勤務”する現役情報部員。日本など外国のメディアで“北の酷い実態”を語るのも仕事の一部と思われる。にもかかわらず、その証言を一歩引いて検証する視点が特集Vに欠けていたのは残念。金氏の証言に安明進証言のような胡散臭さは感じなかったが。

 Nステは最近“反北朝鮮”的な特集が続いている。来週は「政治犯収容所」をやるらしい。この分だと、以前好意的な扱いで特集していた朝鮮コンピューターセンター(KCC)の“暗部”についてもいずれ取り上げることになるかも。コンピュータ将棋ファンとしては、ダーティーな話題(盗作疑惑)はさておき、ディープな話題でKCCの名を見るのは心中複雑なものがある。どうなることやら(*1)

 久米宏やコメンテーターは特集Vの作られ方に危惧を抱いている気配あり。12日の「南浦港の謎」では清水氏が、アメリカが北朝鮮の“不審船”を拘束したがすぐに解放して積荷のミサイルをイエメンに渡すことになった件(*2)について、韓国の大統領選や反米デモへの牽制である可能性を示唆していたし、13日の「保衛部の暗部」では、V明けに久米宏が「ほとんど戦前・戦中の日本と同じ」云々とコメントして特集Vの視野狭窄ぶりを暗にほのめかしていた。(と見るのは穿ち過ぎかもしれないが。)

 先月22日の雑談で韓国安企部が云々と書いていたが、安全企画部は98年(99年1月?)に国家情報院に改称している。過去ログを訂正した。

 (*1) 過去の好意的な特集については 2000年9月28日の雑談ITな棋士たち from 北朝鮮(2001年4月6日放送)、KCC囲碁の盗作疑惑については2000年9月30日の雑談を参照。

 ディープなネタは専門サイト参照。↓
 ・ 朝鮮コンピューターセンターの秘密North Korea TODAY

 (*2) 「スカッド・ミサイルとその燃料になる化学物質が北朝鮮の南浦港で船に荷積みされ、イエメンに向かった」今月3日には報道されていたのに、11日のNステの第一報は“不審船”と呼称。

 ・ 北朝鮮、イエメンにミサイル輸出 米紙報道 (12/3、朝日)
 ・ 北朝鮮船ミサイル 米政府が輸送船を解放 イエメンへ向かう (12/12、毎日:特集



 2002-12-14  ばななパパ、形無し

 見て見ぬふりをするつもりだったのだが。気が変わった。書く。

 よしもとばなな日記(11月17日)によると、よしもと氏の実家の父は、トイレで用を足した後、尻を拭かないらしい。時々は拭くらしい。

 吉本隆明の厠での秘事をワールドワイドに大公開。WEB日記って、怖い。

 (この項、15日アップロード)



 2002-12-12  よしもとばななが盗作作家を擁護

 この項は田口ランディ盗作疑惑に纏めた。



 2002-12-10  田中さんへの過熱取材 /元工作員の証言(2)

 今夜のNステはずいぶん時間をかけてノーベル賞受賞の田中さんネタをやっていた。CGでの遊びや過去V総集編などはどうということもないが、スウェーデンでの“田中さんに昆布を渡そう”企画はやり過ぎ。日本の取材陣が現地で顰蹙を買っているらしいが、Nステのスタッフも迷惑取材陣の構成メンバーだよ、あんなことやってたら。

 ・ ノーベル賞の田中さんに「ワイドショー」取材過熱 (12/10、読売)


*  *  *

 7日の項(古川了子さんに関する安明進証言の報道)の続き。比較用に引用しておく。

 「時期は、安氏がスパイ養成機関とされる金正日政治軍事大学生だった91年9月ごろ。訓練中に打撲傷を負い、平壌市北部の『915病院』に入院していた時だった。安氏が鉄条網を越えて院外に出ようとしたところ、その女性に見つかり、見逃してもらった」12/6、朝日

 「安氏は91年9月ごろ、入院していた平壌郊外の病院敷地内の道で偶然会った女性に声をかけたが、女性は何も答えなかった」12/6、毎日

 「安氏が女性に会ったのは、平壌北部にある労働党直属といわれる『915病院』。安氏が声をかけたのに対し、女性はうなずくだけで返事をしなかった」12/6、読売

 (引用URL&日付はWEB速報。リンクが切れていたら項末の各紙特集記事を参照のこと。)

 竹下珠路氏(古川さんの姉)とともに安明進と面会した「救う会」荒木事務局長のレポートが救う会全国協議会ニュース(2002.12.7)に掲載されている。6日の各紙の報道よりも当然詳細。ところが荒木レポートには朝日の記事の「訓練中に打撲傷を負い」に相当する入院理由の記述がなく、「安氏が鉄条網を越えて院外に出ようとしたところ」に対応する描写も無い。

 3紙の中で朝日だけが「目撃当時の状況」について詳しく、荒木レポートに無い記述まであるというのは興味深い(朝日の記事は「会見によると」としているので朝日独自の情報を織り込んでいるとは思えない)。

 ……というようなことは所詮枝葉、安明進証言の信憑性とは関係ないのだが、気になるので書きとめておく。

 ・ 救う会全国協議会ニュース(2002.12.7)協議会ニュースバックナンバー

 ・ 「千葉の不明女性に似た人を平壌で見た」 元工作員証言 (12/6、朝日特集速報
 ・ 古川了子さん 北朝鮮の元工作員が「似てる人見た」と証言 (12/7、毎日特集速報
 ・ 73年失跡の古川さんも拉致?/救う会 (12/7、読売特集速報

 WEB速報は3紙とも12/6午後。


 2002-12-09  お妾はたつた四五寸仕事なり

 6日の雑談でリンクした絶望書店9月の日記には興味深いやりとり(往復書簡)が掲載されている。『江戸幻想批判』に対する辛辣な評に怒った著者・小谷野敦氏の「匿名批評はけしからん、実名を名乗れ、さもなくば全文削除せよ」という要求をいなし、読み応えのある議論に誘導していく絶望書店主人の手際が見物。

 ・ 平均寿命23歳絶望書店日記絶望書店


 往復書簡を読み進むと『世事見聞録』の名が挙がり、吉原に関する記述の信憑性やこの書物の性格について注釈なしに引用することの是非が論点の一つとなっている。『世事見聞録』を読んだことはないのだが、なぜかかすかに既読感めいたものあり。見当をつけて数冊当たってみたところ、田辺聖子の『古川柳おちぼひろい』(講談社文庫)で言及されていた。田辺聖子が引いているのはお妾商売のくだり。

 「(略)文化のころの本だが『世事見聞録』にお妾商売の内実がくわしくのっている。『男来れば男女差向ひ三味線を曳て、哥を諷ひ、酒宴遊興に飽き、父母姉妹等のもの其傍に有て、酒肴の調度衣類の着更へ寝所の世話もいたし』というから、母親などが却って娘の世話をして下女のごとく、とりもちをしたさまが窺われる。
 芝居見物、物参り、遊山川涼み、髪飾り衣類の善美をつくし、芸者太鼓もちをとりまきにし、たいへんなもので、諸人、妾商売をうらやみ男子を生むより女子を生むことを願うとは、言語道断な時勢だと、この本の筆者は憤っている。
 『昼夜遊んで暮す程の入用を取事にて、当時程(かほど)の安楽成事なし……娘も己が力にて父母兄弟を養ひ、殊に衣類又好味をも自由に宛行ふ故、おのづから心に慢し我儘一ぱいにはびこり、尤も親は昼夜苦痛に堪へ兼て渡世を送るよりは、今の仕合に逢て安躰に過行事ゆゑ、いつとなく娘を主人のごとく心得、終に親子の見境もなく成行也』
 『世事見聞録』の筆者『武陽隠士』というおじさんは、爛熟した末期大江戸の風俗頽廃にハラをたてているもののごとく、お妾をかく痛罵しているのである。
 しかし、古川柳では、そういう四角四面な、しかつめらしい腹のたて方はしないのである。
 <お妾はたつた四五寸仕事なり>(『末摘花』)
 と揶揄する。武陽隠士にいわせると、侍は一俵の米にも命がけの奉公をし、武芸者は汗を流して師範しても芸者のいっときの花代もかせげない、と慨嘆するが、川柳子はそれを『四五寸仕事』といってのける。四五寸とは何だ、と開き直られると返答に窮するが、メートル法でいくと何センチになるか、それにあてはまる心当りのものを勘考されて、この句を味わって頂きたい。必ずや身近にあろう。
 どうみても、武陽隠士が(おそらく侍の出身であろう)口角泡をとばして論難するよりは、この一句の方に風刺と皮肉が利いている」

 出典:『古川柳おちぼひろい』、田辺聖子、p.54-55 (一箇所を除きルビは省略)

 「おそらく侍の出身」の「おじさん」が「風俗頽廃にハラをたてているもののごとく」「口角泡をとばして論難」という記述が可笑しい。苦り切った堅物おじさんの姿が目に浮かぶ。田辺聖子の文章は『世事見聞録』を当時の風俗を窺う資料として援用しつつ、同時に川柳の粋の引き立て役にも利用して、この書物の性格をも読者に教えている。これが私の錯覚の正体であった。

 上記引用箇所は『世事見聞録』からの引用があるためちょっと堅めだが、ここは例外。『古川柳おちぼひろい』は古川柳から人情の機微を読み解く軽妙なエッセイである。蛇足ながら念のため。


 「四五寸仕事」か。そういえば、13cmという美少女ゲーム・メーカーがあったっけ。



 2002-12-08  訂正

 6日の項でミスをしていた。
 田口ランディの「改稿のお知らせ」は藤森直子の著書名(『Fuckin' Blue Film』)や出版社名を隠しているが、藤森直子の名は伏せていない。私の要約ミスです。 m(_ _)m

 該当箇所を訂正し、追記を入れた。(田口ランディ盗作疑惑に纏めた分も訂正。)


 先日の「かわゆい」の件に続き、恥ずかしいチョンボ連発である。(T_T)



 2002-12-07  元工作員の証言 (12-08追記)

 6日のNステで「また1人拉致疑惑」として1973年に千葉で失踪した古川了子さんの件を報道。ニュース原稿は「北朝鮮の元工作員の証言で」と証言者の名を伏せていたので新証言かと思ってWEBの記事を読んでみたら……すでに一部メディアが報道済み(*)安明進証言であった。なんでNステは安明進の名を省略したんだ? 新聞記事(各紙一斉報道)は安明進の名を明記している。↓

 ・ 「千葉の不明女性に似た人を平壌で見た」 元工作員証言 (12/6、朝日)
 ・ <古川了子さん>北朝鮮の元工作員が「似てる人見た」と証言 (12/6、毎日)
 ・ 千葉の古川さんも拉致か…平壌で元工作員が「目撃」 (12/6、読売)

 ソースは同じ「救う会」の会見なのに朝日の記事だけ目撃当時の状況説明が違う(詳しい)。
 (この件については10日の項に続きあり。)


 (*) 先月3日にCXが報道。→ 千葉の女性「13年前、平壌で見た」 安明進氏 (11/4、産経)


追記 (12-08) 記事へのコメントと注を追加。


*  *  *

 6日の雑談は、過去ログと一部重複するが田口ランディ盗作疑惑にも入れておく。



 2002-12-06  「ブログ」と盗作報道

 アメリカで「ブログ(blog:Weblogの短縮形)」が流行っているというのを、今年5月に2ちゃんねるの田口ランディ盗作検証スレッド群(*1)をワッチしていて知った。「『ブログ』という新語」を取り上げた「ブログ」の中のうじ虫という朝日新聞に掲載されたコラムが田口ランディの盗作に言及していたため話題になったのである。しかしこのコラムのWEBに関する記述は杜撰で(*2)、ブログの実態もよくわからない。調べる気にもならずそれきり忘れていた。

 先月は“日本に輸入されたブログ”を巡り既存の日記系・個人ニュース系サイトの一部がホットになっていたが下旬には終息。騒動をワッチしていても結局焦点というか、なにをもってブログとするか、ブログの定義さえ理解できなかった。

 ワッチの過程で絶望書店という興味深いサイトを知る。今月1日にはサイトの表紙がファンシーに模様替えしていて笑った。表紙と中身の落差がすごい。すごかった。(**)

 ・ 「ブログ」の中のうじ虫 朝日新聞「be」、02年5月11日号掲載)

 ・ 冬眠日記 (11/12〜11/24の項がブログ騒動の関係サイトを網羅)
 ・ 日本ウェブログ学会 (設立趣旨で「ブログ」をシンプルに定義)
 ・ 絶望書店日記絶望書店


 (*1) たぶん初出は産廃物&盗作屋・田口ランディ監視スレ Part26一般書籍@2ch掲示板)の#330(5月11日の投稿)。現在このスレッドは参照不能(過去ログのHTML化待ち)。

 (*2) 筆者は日米のWEB事情の違いを把握していない。明らかな混同がある。

 (**) この項は後半部分の推敲で数日寝かせていたのだが、アップロード前に確認してみたら元に戻っていた。1日遅かったか(笑)。「絶望しちゃったわ書店絶子日記」も削除されている。


*  *  *

 以下の部分は田口ランディ盗作疑惑に纏めた。

 (要約:4月の盗作報道は加害者側の言い分のみに依拠する偏ったものであった。これが誤解を生んでいる。「ブログ」の中のうじ虫の記述はその典型である。)



 2002-12-04  かわゆい /加藤周一@News23 (12-05追記)

 高浜虚子の『俳句はかく解しかく味う』(岩波文庫)をぱらぱら眺めていたら「可愛ゆい美しいもの」(p.171)という表現があってびっくり。「かわゆい」というのはごく最近発生したヲタク的な萌え用語だと誤解していた。これは(少なくとも)80年以上前からある俗語だったのか。


(12-05 追記)

 「かわゆい」についてツッコミが入った。慌てて調べてみた。

 (1) 「かわいい」は「かわゆい」から転じたもの(← 広辞苑「かわいい」の項)

 「(少なくとも)80年以上前からある俗語」とは我ながらとんでもないオオボケである。なお、俗語というのは三省堂国語辞典の「かわゆい」の項の用語分類〔俗・文〕を見ての早とちり(〔文〕は文語ではなく文章語)。

 (2) ヲタク語にあらず

 「かわゆい」をくだけた文脈で使うのは新しくもヲタク的用法でもない、20年ほど前(あるいはもっと前)には女子中高生言葉としてあったのではないか、旧かな(「〜しませう」など)を織り交ぜて使うのと同じ傾向のものとして、との指摘もいただいた。なるほど。「かわゆい」は語感も文字づらも丸文字と相性よさそうだなあ。

 お粗末さまでした。 m(_ _)m


 WEB検索で詳しい解説投稿を見つけた。→ キレイでカワイソウ(2)の#650

 ・ 電脳連句 > ライブラリ > 「言語」タイトル一覧 > キレイでカワイソウ(2)

 (追記終わり)


*  *  *

 加藤周一そっくり。しばらく画面を眺めていたら名前のテロップが出た。ご本人であった。筑紫哲也と京都の景観破壊や日本語の破壊を巡っての対談(News23)。

 変わらねばならないが同時に古いものも守らねばならないという緊張関係がこの国にはまったくない、日本の景観破壊・日本語破壊には悲しみや緊張が無い、嬉々としてあるいは気軽に破壊してしまっていると語る加藤氏。筑紫哲也が「近年はカタカナ語の濫用で日本語を目茶目茶にしている」云々と同調するのを聞いて、カタカナ語濫用を皮肉った加藤氏の昔のエッセイ(途中からどんどんカタカナ語が増えて最後は英語フランス語ラテン語その他諸言語ごちゃまぜのカタカナのみの文章になってしまう)を思い出した。20年以上前に書かれたものだったと思うが、濫用は当時よりさらにひどくなっているのであろうね。

 本棚の奥から加藤周一『真面目な冗談』(平凡社)をひっぱり出して探してみたが上記のエッセイは見当たらない。他の本だっけか?

 (この項、5日アップロード)



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