近況雑談の過去ログ11(2000-05)


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 2000-05-31  上のパート(合唱) /日経BPのグヌテラ紹介記事

 テレ朝「Mの黙示録」で学校の音楽教科書を取り上げていた。Kiroroにフォークソングの「この野原いっぱい」を知っているかと尋ねると「知らない」と答える。が、実際に聴かせると知っている。ヒット曲であることを知らぬまま学校で教材として習っていたのであった、という話から教科書とヒット曲の関係の考察に進むという番組構成。
 この導入部分でKiroroに「知らない? こういう歌なんだけど」と曲を聴かせる場面が面白かった。「あー知ってる!」と言ってKiroroの片割れ(名前知らない。たぶんボーカル担当の方)が流れる曲に合わせて自分も歌い始めたのだが、音程がなんか、すごく違う。一瞬「Kiroroって……実は音痴?」と思ってしまった。数秒聴いていて気づいたんだが、コーラスの上のパートを歌っているのであった。学生時代の合唱では上のパート専門だったのかしらん。(^^;)

 2001-01-08:番組名を訂正(「音楽評論」→「Mの黙示録」)


 買い物帰りに自販機でジュースを買おうとしたが果たせず。キャッシュで6100円も持っているのに120円の買い物ができないとは理不尽である。(5000円札+500円玉2個+100円玉1個)
 そういえば、たまに500円玉が使えないくせにお釣りで500円玉が出てくる自販機があるが、小馬鹿にされてる気がしてムカつくのは私の了見違いなんだろうか。

 日経BPのBizTech NewsがGnutellaを取り上げているのだが、まるで社内LAN用検索ソフトのような紹介をしている(→ ネットのファイルを簡単検索、話題のフリーソフト)。ネット上の技術ニュースとしては後追いに近いのに、これでいいのかと思ったが、詳報の記事はしっかりしている(→ ネットのファイルを簡単検索 話題のフリーソフトが騒がれる理由)。記事のタイトルの微妙な違いが面白い。
 詳報の末尾で関連リンクとして挙げられている「メディアを賑わすGnutella」(リンクのタイトルは詳報記事ママ)では、AOLによるGnutellaの買い取り&開発停止措置という毎日の記事は誤報であると指摘している。

 先週末からISPのルーターや認証サーバーがコケまくりでまともにインターネットにアクセスできない。この項は29日夜に書いたもの。



 2000-05-26  『バルタザールの遍歴』絶版の消息

 「噂の真相」6月号で平野啓一郎『日蝕』の盗作疑惑を知り、野次馬根性で佐藤亜紀のホームページへ。

 ファンタジーノベル大賞を受賞した佐藤亜紀のデビュー作『バルタザールの遍歴』は傑作である。が、読者を選ぶタイプの小説で誰にでもお勧めできるというものではない。著者の佐藤亜紀については、趣味の良い、博学な、しかしひ弱な美大系の人という印象を受けて、コンスタントに商業ベースで作品を量産できる作家ではないなと感じた。『後宮小説』でデビューした酒見賢一には、構えが大きくて質と量を維持できる大型新人という気配があったんだけど。ちなみにこちらは誰にでも勧められる(『後宮小説』を楽しめないなら小説を読むのは諦めた方がよい)。

 今回ご本人のホームページを見てとんだ思い違いをしていたことがわかった。ひ弱だなんてとんでもない。今どき珍しい超ド級の、戦闘的な理論派毒舌家だよ、この人。(^^;)

 『バルタザール』絶版に至る事情説明は大変興味深い。そればかりでなく、その件以外の他のページも非常に面白く読めた。WEB掲載の文章がこんなに凄いってことは……佐藤亜紀の著書は見つけ次第買いだな。


追記(2004-09-27)

佐藤亜紀のサイトへのリンクを張り直しておく(移転したのは2年以上前)。



 2000-05-24  おつむの具合は大丈夫?

 定期チェックしていたお気に入りのサイト群が阿呆餓鬼集団の荒らし攻撃を受けてバタバタと閉鎖。サイト潰しには大義名分(法的措置をちらつかせた恫喝)もハッキング技術も要らない。インターネットというメディアは実に脆弱である。

 野党やマスコミによる森総理「神の国」発言への追及が続いている。確かに日本国総理の言葉としてはトンデモではあるが、石原都知事の「三国人」発言に比べれば可愛いもんだと思うぞ。……不毛な比較だが。
 TVニュースをザッピングしているとテレ朝に比べてCXやTBSは「神の国」発言や森内閣の正統性疑惑追及にあまり力を入れていないように感じる。選挙が間近に迫り、各マスコミの党派性が露出してきているんだろーか。

 22日ニュースステーションでは小沢一郎のロングインタビュー。なぜまたこの時期に、よりによって小沢一郎を(笑)。

 頭部に問題が生じて手術を受けることになった友人の見舞いのためJ天堂病院に行く。ナースステーションで見舞いの手続きをしていたら背後から頭包帯ぐるぐる巻き状態の本人がヌッと現われ見舞い客一同腰を抜かす。残念ながら「うま、うま」とか「あとは万事まかせた」などの決め台詞は無し。



 2000-05-24  革命的ソフト・グヌテラ

 19日(金曜)のCXニューススピークで、社員の開発したネット検索ソフトGnutellaをAOLが100億円で買収して開発を中止させたというニュースが流れた。検索エンジンなどを経由せずに直接WWW上のファイルを(*) 検索することが可能になるため、このソフトは検索サービスやAOLのようなポータルサイトの存在意義を揺るがす脅威となる、らしい。寝転がってTVを眺めていたんだが、飛び起きちゃったよ。これって革新的というのをはるかに超えた革命的ソフト(技術)なんじゃないの?
 ガソリン不要のエンジン、永久機関、タイムマシン……これらはすでに開発されているが大企業が既得権益を守るために隠蔽・抹殺している云々の「闇に葬られた発明」ネタは陰謀論の定番だが、ちょっとその匂いがある。すげー重大ニュースだと思うのだが、夕方や夜のTVニュースではほとんど取り上げられなかった模様。
 翌日以降も続報がないので、革命的な技術が企業の論理(金の力)で闇に葬られようとしている、という私の理解はピンボケだったのかと思いかけていたのだが、WEBで関連記事を見て再確信。やっぱりこれ、凄いじゃん。「検索ソフト」なんて範疇に収まる矮小なツールではない。
 私は19日のTVニュースで初めて知ったのだが、Gnutellaと同種の先行ソフトはすでにユーザーが大勢いて、他にも様々な類似ソフトが広まり始めているらしい。AOLによるソフト買収&開発停止措置はこの技術を葬るためというより、(著作権侵害の)責任忌避のためになされたようだ。興味のある人は関連サイトの解説記事を参照されたし。

AOL:検索業者いらずの革命的ソフト、1億ドルで買収 (毎日インタラクティブ)
Webを覆すNapsterやGnutellaの可能性 (ZDNet 4/24の記事)
Gnutella 〜実験的な共有テクノロジー〜

(*)  毎日の記事(*)では「ネットでつながっているサイトを次々に」検索する、という書き方をしているが、対象はいわゆるサイト(WWWサーバー上のファイル群)に限らず、WWWに接続してGnutellaを走らせている全コンピュータが検索対象になるようだ。(私もよくわかってないので、この補足を鵜呑みにしてはいけない。)

(*)  毎日の記事は誤報、との説あり。31日の項を参照のこと。(05-31 追記)


 上にリンクをはったZDNetの記事の「真のウェブの登場」という節を読んでの連想余談。
 10年前の日本のパソコン界はNECのPC98一人勝ち状態で、マイナー機種X68000の市販ソフトや情報は少なく、有志ユーザーが公開するフリーソフトや技術情報が頼りだった。フリーソフトや情報の集積するBBSにはアクセスが集中した。X68000の初期の定番通信ソフトABTerm(のC版)にはホスト機能が付いていた。それは、各ユーザーは受け手であるばかりでなく、それぞれが情報の発信基地を目指すべしという思想に基づくものだった。結局、ABTermのホスト機能はほとんど活用されることなく、定番通信ソフトの地位を後発のソフトに譲ることになるのだが。
 WWWに接続して自分でもWEBページを作るようになり、ユーザー一人ひとりが発信基地にというABTermの思想は気づけば現実のものになっていた。が、ネットはさらに次のステップに進みつつあるんだなあ。企業主体のポータルサイトの構築という発想自体、(古い、マニアックな)ネットワーカーの理想から逆行するものだったんだ、と気づかされた。
 もっとも、「真のウェブの登場」といっても、現在の、そして当面の間、流通対象の大半は出来合いのソフト(楽曲データやアングラなアレコレの類)だろうから、この「革命的ソフト」に絡めてネットワーカーの理想を語るのはちょっと気恥ずかしいものがあるのだが。これはあくまで連想思い出話。



 2000-05-16  「ポリティカル・コレクト(ネス)」3 /InfoseekのTVCF

 ニュースステーションにオリバー・ストーン監督が生出演。戦争から経済界まで様々な題材で映画を撮っていることについて、(私は生き生きとした現場の人間を描きたい云々に続けて)「アメリカではTVでも映画でも、人工的な、表層的な、つまりポリティカル・コレクトなことしか描かない、まともなことしか(描かない)」と語る。
 ストーンのメディア批判はさておき。
 プロの通訳がポリティカル・コレクトな、とはこれいかに? ストーンの発言部分を、録画したビデオで聞き返してみた。どうも political correct behavior と言っているようだがよくわからない。通訳の頭に「ポリティカル・コレクト」という和製英語があって口から出たのか、日本語への置き換えが間に合わずにとっさに生の英単語を並べてしまったのか、真相不明。

 Lycos、Yahoo!、Exciteに続いて最近はInfoseekもTVCFを流している。2パターンあるようだ。サーチエンジンとしては老舗なのに新興弱小企業のフリしてライバルの知名度を逆手に取る広告戦略、自身を貧弱な体躯の学生レスラー(?)に見立てる笑いのセンス、ともにお見事。当サイトのホストはCFで敵役として登場するYahoo!傘下のYahoo!ジオシティーズなんだが、エールを送るぐらい問題なかろう。頑張れInfoseek(笑)。
 敵役なんだからいかにも強そうな巨漢の外人レスラーとして登場するのは、まあ妥当な線だろうけど、Yahoo!を格闘家に見立てるならやっぱバーチャ・ファイターのサラだな。勝利の雄たけびが「ヤフー!」だし、あのいかにも高慢そうな、おっととと以下自粛。(^^;)



 2000-05-13  運転手の会見(バスジャック)

 4日早朝の警官隊突入時の映像にこんなシーンがあった。……警官隊がバス前方の乗降口を蹴破るとほぼ同時に運転手は自力で車外に出てきた。警官たちは車内に突入するべく乗降口や破った窓周辺に群がっている。運転手を誘導しようとする者はいない。運転手はバスから離れず、逆に、今出てきたばかりの乗降口に近づいていって警官たちの後ろから閃光弾の白煙が立ち込める車内の様子を覗き込む……。
 異常な状況下、パニックに陥った状態で無意識にする人間の仕草って、奇妙なもんだなあとつくづく思った。この時、警官の後ろから車内を覗き込む運転手は、両手をズボンのポケットに突っ込んでいたんである。その姿はまるで突入作戦の現場に紛れ込んできた能天気な野次馬のようであり、不思議な光景であった。

 11日、バスの運転手が会見に出て乗っ取られていた時の車内の様子などを語った。たぶん警察の事情聴取のためなんだろう、まだ自宅にも帰っていないんだとか。被害者の一人なのに、帰宅より会見を優先してマスコミの前に出てきたのは何か切迫した事情があるようにも思える。TVニュースを見ながら、西鉄に、運転手を非難するいやがらせ電話のたぐいが相当あったのではないか、あのシーンを見て、「乗客が一人殺されてるのに、なんだあの運転手の態度は!」というような、見当違いの文句を言い立てる人間がけっこういたのではないか、と嫌なことを考えてしまった。


 10日の項の補足。10日午後、警察は「ネオむぎ茶」名で謎のメッセージ(犯行予告? とされるもの)を投稿した人物を犯人と断定したらしい。:→ asahi.com 5月10日

 上にリンクした朝日の記事は、ネット事情に不案内な読者向けに筋を整えて書いてあるんだろうが記述が不備。ISPのアクセスログで特定したのは「キャットキラー」名での投稿であって、問題の事件当日の「ネオむぎ茶」名の投稿が犯人のものであるとアクセスログで特定できているのかどうか、はっきりしない。まるで警察が、「同一ハンドルの投稿=同一人物によるもの」と見なしているかのような記述になっている。まあこれは記事の書き方の問題で、警察ではちゃんと特定を済ませているとは思うが。
(他社の記事やTVの報道でも、特定しているのは「キャットキラー」名での投稿だけなんじゃないかと思わされるような、朝日の記事と同じ舌足らずな説明の仕方をしている。どうやらネタ元の警察発表自体が端折った説明になっているようだ。)



 2000-05-10  バスジャックとネット

 今ネットで熱い話題は、西鉄バスジャック事件の犯人が事前に掲示板で犯行予告をしていたらしい云々の件。これは4日の時点で、犯人の顔写真がネットで流れている件と共に毎日新聞記事にしているが、昨夜(9日)のニュースステーションは一歩踏み込んで「ネオむぎ茶」を紹介した(当該サイトでは、このハンドルを名乗って問題のメッセージを書いた人物=犯人、との説で盛り上がっている)。アブナイ一歩だなあ。“虚報”になる危険がかなり高いと思うぞ、これ。

 今に始まったことではないが、新聞やTVがネットのネガティブ面を取り上げる時はURLを明示しない。当該サイトはサーチエンジンを使えばすぐ見つかるはずだ。毎日新聞が著名なホームページの掲示板」4日の記事)とお墨付きを授けるほどのところなんだし。隠蔽なんざ不可能なんだから、ちゃんとURLを出すべきだと思うぞ。もっとも当のサイトは、たぶん今夜もサーバーが落ちてるだろうけど。(^^;)
 ニュースステーションではサイトの名称さえ伏せていたのだが、サイト運営者は実名で顔出しインタビューを受けていた。変なの。このチグハグさは、番組制作側がこの件(や当該サイト)とどう距離をおくか決めかねたゆえのものなんだろうか。

 追記。「ネオむぎ茶」についてはすでに8日にCXのワイドショーが紹介していたらしい。

 ・掲示板サイトの当該スレッド(ほとぼりが冷めるまで繋がらないかも):→ 佐賀県佐賀市17歳・・・。
 (追記:繋がったがログを含めてスレッドごと移転している。これを書いている時点で移転先には繋がらない。)
 (12日追記:関連スレッドはまとめて移転したらしいが、10日〜12日、全然接続できない。ログ自体はあちこちに転載されているのだが。)



 2000-05-10  「ポリティカル・コレクトネス」2

 7日の項の続き。仕事の帰りに大型書店に寄って外来語辞典の類を6冊チェックしてみた。集英社『ポケット カタカナ語辞典』は「ポリティカル・コレクトネス」、旺文社『カタカナ語・略語辞典』は「ポリティカリー・コレクト」の形で収録しており、他の4冊ではこの語句は取り上げていなかった。
 チェックした中では三省堂コンサイスがいちばん収録語数が多かったのだが(5万語以上)、94年発行のためか記載なし。(アメリカでPC運動が盛りあがったのは80年代後半からだが、日本でこの新語が話題になり始めたのは95年に『政治的に正しいおとぎ話』がベストセラーになって以降だから、なんだろうな。あくまで推測だけど。)

 WEBで関連ページを見ているとカタカナ語としては「ポリティカル・コレクト」という表記が定着しつつあるらしい……と感じるのだが、これが和製英語として熟すまでは「ポリティカリー・コレクト」か「ポリティカル・コレクトネス」と正しい英語で書く(言う)ようにした方がよさそうだ。まあ、ふだん使うような言葉じゃないけど。



 2000-05-07  語句訂正(→ポリティカル・コレクトネス)

 「三国人」発言関連の雑談(4月17日の項)で「ポリティカル・コレクティブ」と書いていたがこれは間違い。英語では「ポリティカリー・コレクト politically correct」あるいは「ポリティカル・コレクトネス political correctness」が正しい(らしい)。この語句は、17日の「News23」に生出演した石原都知事の発言から拾ったのだが、録画したビデオで確認してみたら、石原慎太郎は「ポリティカル・コレクトネス」と正しく発語している。完全に私の聞き取りミスであった。お恥ずかしい。(--;)

 この語句を聞いた(誤って聞き取った)時に気になって、17日の雑談を書く前に一応手元の英和辞書で調べている。correct は形容詞&他動詞であり名詞ではない、corrective は形容詞&名詞、ってことは「ポリティカル・コレクト」という表記をたまに目にするけど、英語では「〜・コレクティブ」が正しいのかも、とハンパで見当違いな判断をしてしまったのが敗因である。ってか、そもそもが私の聞き違いではお話にならない。

 手元の英和や新語辞典にこの語句は載っていない。今回の確認・訂正には、オンライン辞書サービスの 英辞郎 on the Web とサーチエンジンgoo目的サーチ[英和辞典]、 英英辞書の Dictionary.com . を利用した。

 冒頭書いたように、英語では politically correct あるいは political correctness というらしいが、WEBで見かけるカタカナ表記は「ポリティカル・コレクト」が多い。外来語としてはこの表記が定着しかかっているんだろーか。ちなみにWEB上にいくつかある、『政治的に正しいおとぎ話』(1995年にベストセラーになった、PC運動を皮肉った名作童話のパロディー本)に言及したページでは「ポリティカリー・コレクト」と表記している。

 余談。『政治的に正しいおとぎ話』(の翻訳書)については版元が紹介ページを作っている。版元はDHC。聞いたことない出版社だが、妙に耳に馴染んだ名前のようにも思える。DHCのホームページに飛んでみたら……うわぁい、DHCって、あの、「♪ゼロイチニーゼロ サンサンサンの キュウレイロク〜」(by 美輪明宏の美声)のDHCか!
 異業種企業が出版を手掛けるというのはよくあるが、DHCの出版事業部は図書目録を見ると、ひとかどの版元なんだなあ。ピンとこなかったのは私が無知なだけであった。

 参考まで。
political correctness
差別語禁止、政治的公正、政治的正当性、差別されている人を擁護すること→【略】PC
Political Correctness movement
PC運動、「政治的公正」運動
(引用出典:→ 英辞郎 on the Web



 2000-05-04  『とびきり哀しいスコットランド史』

 『とびきり哀しいスコットランド史』(ちくま文庫)読了。氷河期から1707年独立国家としての消滅(イングランドに併合)までを描くスコットランド衰亡史。

 原題の"SCOTLAND BLOODY SCOTLAND"が表わすように陰惨で血なまぐさいエピソードの連続なのだが、1項目が2〜3ページと短く(全話コミック調のイラスト付き)、描写もユーモアたっぷりで読みやすい。
 「スカンディナヴィア人(略)、別名ヴァイキングは、八世紀末頃に夏の間だけやって来ては襲撃を繰り返した。しかし大殺戮、略奪、暴行、放火など、北欧人なら誰でも休日には楽しむような遊びがスコットランドには少なく、これからいくらでも発展の余地があることを見抜いてからはそこに定住するようになった」(p.42)
 といった調子。が、ご当地事情に疎い悲しさでジョークなのかマジな話なのかわからないような記述も結構ある。例えばこんなぐあい。
 「その勝利を祝うため、ドゥ・クレッシンガムのぶくぶくと太った死体は野ざらしにされ(略)、細かく切り刻まれて、国中に散らばる友人や親類縁者へ送りつけられた。これが、『ウィー・ギフティー』(ちょっとした贈り物)、つまりスコットランドの土産物産業の始まりである」(p.107)
 これは地口のジョークなんだろうけど(この種のシャレが本書ではよく出てくる)、もしかしたら語句の由来としてマジな話なのかもと思えないこともない。(^^;)heee

 上の引用文中の「その勝利」というのは、イングランドの軍隊に対するウォレス軍(スコットランド民衆軍)の初勝利を指す(スターリング・ブリッジの戦い)。 99年2月2日に映画「ブレイブハート」の感想として、 「イングランド王エドワード1世は冷酷非情の敵役なんだが、冷酷とか残虐ということではスコットランドの貴族、部族もいい勝負していたんだろう。ちらほらとそういう描写もあった。洋物ゲームの『パワーモンガー』や『War Craft』に窺われる殺戮の闘争史観は蛮族アングロサクソンのもの、との感を新たにする」 と書いた。私のような予備知識に欠ける者にこういう感想を抱かせたということは、映画「ブレイブハート」は英雄物語ではあるが、主人公の暗黒面の描写も疎かにしていなかった、ということだな。英雄ウォレスに関して本書にはこんな記述もある。
 「ウォレスは自分を含めたスコットランド人が、残忍な国民であることを認めた最初の人物だった(彼の剣帯は、趣味の良いことにドゥ・クレッシンガムの皮で覆われていた)」(p.110)

 上で自家引用した中の「蛮族アングロサクソン」という表現は、我ながら雑駁で情けない。まあしかし、「1000年前、ヨーロッパにはヴァイキングしかいなかった」(©森喜朗総理)なんて迷言よりは多少ましであろー。見逃してくれぃ。



 2000-05-02  『名探偵の掟』

 東野圭吾のミステリは以前、雑誌掲載のものを2本読んだことがある。凡作だと思った。おかしい。世間での評判は高いのに。友人には東野圭吾の大ファンもいる。たまたまハズレに当たったかと思い、『怪笑小説』(集英社文庫)を買ってみた。妙だ。駄作とは言わないが、すごくぬるいんですけど、これ?
 世間(や友人)の評価とのギャップが気になる。今度は名作と誉れの高い『名探偵の掟』(講談社文庫)を買ってみた。で、あっという間に読了。

 裏表紙には「本格推理の様々な“お約束”を破った、業界騒然・話題満載の痛快傑作ミステリ」という惹句がある。「業界騒然・話題満載の痛快傑作」というのは肯けるが、これ、ミステリなの? いや、面白く読めたので文句は無いんだけど、この小説がミステリとは思えないんだけどなあ……。
 面白く読めたんだけど、前半はちょっと辛かった。なんやまた『怪笑小説』と同じノリか。東野圭吾って要するにこういう作風の人なのか? と不審を感じてしまって。後半からぐいぐい良くなるんだけど。

 私はミステリのファンではない。「本格推理の自虐趣味」を共有できないので、『名探偵の掟』もパロディー小説の一種としてしか楽しめなかった。残念。



 2000-05-02  「三国人」発言4

 石原「三国人」発言関連の雑談(4月11日〜5月2日)は、雑文に収録した。 → 石原都知事の「三国人」発言



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