2002-08-28 「お葬式」、「千と千尋」、「去年マリエンバートで」 |
今月10日にCXで「お葬式」が放映された。思い立って『「お葬式」日記』(伊丹十三、文藝春秋)をぱらぱらと再読。 この撮影日記は映画公開当時に買って以来何度か読み返しているのだが、読み方が雑だったようで細部が頭に入っていない。細部どころか強く印象に残るはずの仕掛けがいくつか記憶から消えていた。例えば、葬式の手伝いに現われる青木の喪服が白黒逆になっている件。「これは要するに映画青年青木が洒落のつもりでネガの喪服を着ている」(p.178)のだが、すっかり忘れていた。それは仕方がないとしても、画面で青木の白スーツ姿を見た時に思い出せなかったのは情けない。井上陽水がちょい役で出ているなどの小ネタは、忘れても気づかなくてもどうということはないんだけど。 以前読んだ時とは興味をひかれるポイントがかなり変わっている。火葬場の撮影時は曇天で、「煙が出ている煙突も真っ白な曇り空バックでは絵にならない」(p.207)という嘆きなど、屋外撮影にまつわる苦労話が今度の再読では興味深かった。 * * *
雑談で書いたことだが、先日カラオケで「千と千尋の神隠し」を観た。この時は伊丹監督の苦労話が頭に残っていたこともあって、「千と千尋」の青空の、不必要なまでの空の青さが印象に強かった。また、明け方雨の降るなかを鳥に化身した湯婆婆が帰還するシーンではほどよい強度・角度で風が吹き、見事な雨空の絵になっていた。宮崎組には撮影日程に合わせて晴天も雨風も自由に操れるお天気男がいるらしい。
畑ムツゴロウの「子猫物語」で主役チャトランを演じているのは同じ子猫ではない。撮影期間が長く子猫が成長してしまうため顔立ちや毛並みの似通った子猫をリレー撮影したらしい。これについては当時、川で流されるシーンの撮影などで何匹か死なせたのではないかというイヤな噂があった。都市伝説の類だとは思うが。
* * *
以前書いた雑文で「マリエンバード」と誤記していたのを訂正した。 盗作作家・田口ランディのコラムに去年マリエンバードで (*1) というものがある。これについて2ちゃんねるの盗作作家監視スレッドで、監督や作品名を間違えている(*2) との指摘があった。田口ランディの書く文には人名・作品名など固有名詞の誤記・誤字が異様に多いのだが、他の事例についてはともかく、この件では私も該当者である。慌てて『ぴあ映画辞典』で確認すると「マリエンバート」と表記している。「ト」だったのか。 ところがさらにWEBで検索してみると「マリエンバード」と書いてあるページが多数ある(*3)。 もしかして「マリエンバード」でも間違いではないのかも? と判断に迷い、1年ほど放置していたのである。今回あらためて検索してポスターを掲載しているサイト (*4) を見つけ、「マリエンバート」が正解で間違いなしと判断し、遅れ馳せながら訂正したという次第。 実は雑文だけではない。私はプロフィールページでも“お気に入り”としてこの作品を挙げている。その作品名が記憶違いだったとは。とほほ。
(*1)
去年マリエンバードで (MYCOM PC WEB 田口ランディのコラム)
(*2)
田口ランディは「ゴダールの撮った映画」と書いているが正しくはアラン・レネ。これを指摘した投稿の初出が確認できないので、盗作検証サイトにリンクしておく。 (*3) Googleで検索すると現時点で「去年マリエンバードで」は約354件、「去年マリエンバートで」は約600件ヒットする。 (*4) 去年マリエンバートで (宝塚造形芸術大学所蔵ポスター) |