13、14日の放送の感想が長文になってしまったので11、12日の感想と合わせ独立ページにする。 |
03-15: 作成。 |
目次
03-12 白馬と「喜ばせ組」 03-15 「招待所」と金ファミリー /金正日糾弾特報
06-23 “金正日の料理人”の本 |
2003-03-12 白馬と「喜ばせ組」 |
昨日のスーパーニュース@CXで「金正日総書記の元専属料理人がスクープ証言」なるVが放送された。BGMやナレーションで煽りまくっていたが、元料理人・藤本健二氏(仮名)の「証言」内容は、金正日に気に入られた日本人板前が北朝鮮で満喫した特別待遇の日々を語る、という程度のものであった。深夜のニュースJAPANでも短縮版Vを流し、オンライン番組表によると今朝の「とくダネ!」でも取り上げていたらしい。使い回ししまくりだなCX。 藤本氏は腕を見込まれて1年契約で北朝鮮に滞在、その後、1987年に再訪朝して金正日の専属料理人として腕をふるい、2001年4月に帰国。詳しい事情は省略されていたが、食材の買い付けで日本に戻ったおりに北朝鮮と縁を切ったらしい。金正日と極めて親しい間柄であったことを物語る多数の写真が紹介されたが、本人の希望で最近の写真やインタビュー映像では顔出しは無し。“円満退職”ではないらしい。 今夕、「証言」の続編あり。V明けに木村太郎が「独裁者の専属料理人は体調や交遊関係などを知り得る立場にある。ふつうはその存在は隠される。ヒトラーの料理人が誰だったかなんて、知られてないでしょ? 今回のように専属料理人の証言が得られるというのは異例のこと」云々とこの証言が“スクープ”であることを強調していたが、今日もたいした内容は無かった。明日もさらに続きをやるらしいが、明日こそは「衝撃の証言」が飛び出すのかしらん。 印象的だった「証言」のメモ。
今夕のV明けで安藤優子は「恥部を抉り出す証言」とコメント。そうかねえ? まあ、宴会で全裸ダンスをさせるというのは良い趣味ではないけど。 脱北者の証言では金正日の冷酷さや性的不品行への非難がよくあるが、昨夕と今夕放送された藤本氏の証言には金正日に対する批判・非難の言葉はなかった。CXはBGM等の演出で“独裁者の放埓三昧ぶりを語る爆弾証言”に仕立てようとしていたが。なぜか語られていない藤本氏の妻の消息や氏が北朝鮮と縁切りした事情は、明日の第三弾で明かされるのであろうか。
余談。 追記 (03-15)
若干加筆&訂正(水上スクーター → 水上バイク、等)。タイトルを変更。 |
2003-03-15 「招待所」と金ファミリー /金正日糾弾特報 | ||||||
スーパーニュース@CXは11、12日に続き13、14日にも「金正日の元専属料理人のスクープ証言」を放送した。13日は「招待所」、14日は金正日ファミリーに関する証言がメイン。また14日の後半部では、ある意図のもとに元料理人の「証言」を再構成して作られた特集V(スーパー特報)も放送された。 14日の前フリで安藤優子は「次々とスクープ証言が飛び出しています」と自画自賛。この前フリに続いて放送された14日のVには興味深い新証言があったが、11〜13日の放送分で何か“スクープ”と呼ぶに値する証言ってあったっけ? 北朝鮮では「喜び組」ではなく「喜ばせ組」と呼ばれている! 金正日は落馬したことがある! 金正日は衛星放送でNHKやCNNをよく見ている! ……とか? ま、こーいうのもスクープの一種なのかもしれないが。 4日間に渡って放送された藤本氏の「証言」には、金正日や北朝鮮の独裁体制に対する批判・非難の言葉は無かった。金正日に気に入られ親しく過ごした日々を懐かしみ、その特異な体験を今も誇らしく思っているような印象さえ受けた。 この「証言」に対し、CXは露骨な方向付けをする演出をしていた。例えば、水上バイク競争をしたら藤本氏が勝ってしまい、1カ月後に再度“勝負”をした時には金正日のバイクは一回り大きくなっていたという一件。藤本氏は終始笑いながらこの逸話を(将軍さまの負けず嫌いにはまいっちゃいましたよ)という明るいノリで語っているのだが、これに、 「ルールを度外視した金総書記の勝ち負けへのこだわりが窺えます。(略)気さくに振るまいながらも常に権力を誇示し続ける金総書記。その人物から国際社会に発せられるメッセージも、ルールのない勝ち負けへのこだわりなのでしょうか」 なーんて敵意剥き出しのナレーション(&テロップ&おどろおどろしいBGM)を付ける、という具合。 * * *
藤本氏の証言や氏が持ち帰った日付入りのスナップ写真を“素材”にして作られた特報「独裁者の真実 83枚の写真が語る金総書記の異様世界」はこの“演出意図”をさらに強く打ち出して作られたもので、氏の明るい語り口からはかけ離れたものとなっていた。それは――
――という具合に、北朝鮮の内外情勢と藤本氏の証言とを組み合わせて“独裁者の放埓三昧ぶり”を強調する、金正日糾弾Vになっていたのである。 14日の後半部で放送されたこのVを見た藤本氏は「おれの証言やスナップ写真を、こんなふうに使うのか」と驚いたんじゃなかろうか。TV番組は“素材”の“編集”でいかようにも作れることを示す典型例のようなVTRであった。 * * *
CXは昨年10月にキム・ヘギョンさんのインタビューを放送し、「北朝鮮のプロパガンダの垂れ流しだ」と集中砲火を浴びた。CXはあれで懲りてこんな露骨な“反北朝鮮、反金正日”演出をしたんだろうか。 ヘギョンさんインタビューに対する批判・非難の底には「視聴者は少女の涙でイチコロだ」(愚かな視聴者と違って自分たちは騙されないけどな)という驕りがある。そんな思い上がりを抱く人々におもねって14日の特集Vのような“わかりやすい誘導”をせずとも、視聴者は、金正日の優雅な生活ぶりを伝える「証言」を見聞きすれば、自然に北朝鮮の社会体制が孕む矛盾に思いが及ぶはずだ。北朝鮮国民の窮状は数年前から繰り返し報じられているし、軍事力を誇示する北朝鮮の好戦的な外交姿勢や拉致問題への不誠実な対応に対しては、多くの日本人が警戒感や不快感、そして怒りを抱いているのだから。 あるいは、誰かに対するおもねりなどではなく、スーパーニュース@CXの製作陣は、こういう“演出&構成”にしないと日本のTV視聴者(国民)は理解できない、自分の頭では判断できない、と本気で考えているんだろうか。 印象に残った「証言」のメモ
V明けで安藤優子は「NHK、CNNともに受信料が必要なのは言うまでもありません」とコメント。本人は気の利いた皮肉のつもりらしい。
また、金正日に恨みがあるとか独裁体制の打倒を目指しているという類いの強烈な動機はなさそうなのに、なぜ今、金正日ファミリーの私生活を暴く証言に踏み切ったのか、その理由も明らかにされぬままであった。(最近の顔は出さないとはいえ)TVで証言してリスクを負う以上、それに見合う強い動機があるはずなのだが。
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2003-06-23 “金正日の料理人”の本 (07-02追記) |
“金正日の料理人”こと藤本健二氏(仮名)の本が20日に上梓された。紹介記事から推測するに、中身はCXが3月に4日連続で(主にスーパーニュースで)放送したインタビュー特集とほぼ同内容らしい。
藤本氏の話は興味深いものではあったが、“スクープ証言”と呼べるのは後継者問題(高英姫の二男「ジョンウン」(*1))に関する部分ぐらいだった。CXの特集は「喜ばせ組」や金正日の美食三昧にまつわる暴露話で“独裁者・金正日の放埓ぶり”を強調・非難するものだったが、この本も同種の編集方針で製作されたものなんだろうな。CXと同系列の扶桑社だし。
(*1)
上に腹違いの兄・金正男がいるため下にリンクした記事では「三男」となっている。
・ 金正日、10代美少女「喜び組」に全裸命令 (6/20、ZAKZAK)
朝鮮日報は三男ジョンウン後継者説の根拠として「某情報当局者」の話と藤本氏の本の2つを挙げているが、「某情報当局者」の話は胡散臭い。藤本氏の証言に便乗した「お話」かも(笑)。
時事通信は朝鮮日報の記事の紹介だが藤本氏に関しては省略している。
・ 金正日総書記の後継者は次男の金正哲 (2/17、朝鮮日報)
藤本氏の証言以前には高英姫の二男「ジョンウン」は名前さえ不詳で、金正男にかわる後継者有力候補は正哲(ジョンチョル、高英姫の長男)と目されていた。上記3本はその金正哲に関する記事(世界日報は朝鮮日報の記事のダイジェスト)。
(*2)
世界日報は統一協会系(統一協会最新情報参照)。
追記 (07-02)
朝鮮日報の記事(2/17)へのリンクを追加。 |
2003-07-03 金正日料理人SP@CX |
3日、スーパーニュース@CXが「特報 “金正日料理人”SP」を放送。センセーショナルな煽りと過剰演出で飾り立てていたが中身はゆるゆる。感想→ 7月3日の雑談 |
2003-07-08 正雲(ジョンウン) /金正日料理人:人数食い違い |
本日のNステ(北朝鮮の後継者問題を巡る短いニュース)で金正日ファミリー図に三男(高英姫の二男)・正雲(ジョンウン)が登場。「正雲」の字を当てた記事はネットにはあるが、TVでは初めて目にした。といっても最近はNステ以外のニュースはほとんど見ていない。他の番組ではすでに出ているのかも。 藤本健二氏(仮名)の証言ではジョンウンに当てる漢字は不明だったはず。「正雲」の出所はどこなんだろう。 藤本氏の証言の中で注目すべきは金正日の正哲(ジョンチョル)に対する評言やジョンウンに関するものだと思うのだが、週刊ポストのインタビュー記事(7月4日号、聞き手=辺真一氏)にはこの2人に関する質問がまったくない。辺氏なら当然質問したはずだが。編集部が没にしたのかしらん。 * * *
『金正日の料理人』(藤本健二、扶桑社)は、現在紀伊國屋の和書デイリーベスト10で8位に入っている。しかし出足はすぐ止まったようで、発売直後(6月23日〜06月29日)の単行本週刊ベストセラーでは50位だったが最新のランキング(6月30日〜07月06日)では97位に落ちている。Amazonでの売上げランキングは181位。 ・ 金総書記専属すし職人が本出版 (7/6、産経) 本が出たのは先月20日なのに、共同通信や産経はなぜか揃って今月6日に記事にしている。 本の表紙は金総書記が91年に朝鮮人民軍最高司令官に就任した際、総書記を中心に朝鮮労働党や軍の幹部ら22人と藤本氏が並んで撮影した記念写真。写っている幹部らのうち5人が粛清されたという。 7月3日放送の「金正日料理人SP」@CXでは、集合写真に写っている幹部のうち3人が死亡(獄中自殺)、写っていない幹部も3人死亡(獄中自殺1、病死2)、計6人がすでに死亡している、としていた。ソースは同じ藤本証言なのになんで人数が食い違っているんだろう? * * *
(以下、無関係な備忘メモ。省略) |
● 関連記事
・ 金正日・金正男、愛憎の父子関係 (North Korea TODAY)
「新東亜」2001年7月号の記事の翻訳。主題は金正男だが他の金ファミリーに関する詳しい記述もあり。高英姫の二男の名前はこの記事では不詳とされている。CXの放送では二男は長男・正哲の「二つ下」としていたが、この記事では同年(1981年)生まれとしている。
・ 金正男氏、1年以上も北朝鮮入国できず (02.10.17、 朝鮮日報)
韓国の高位当局者(政府高官?)の「金正男氏の北朝鮮入国が不可能になったことから、彼の腹違いの弟である金ジョンチョル氏に対する金総書記の信任が大きくなっている」との観測を紹介。
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● 関連サイト
・ FNN スーパーニュース
前者は視聴者からのメッセージを掲載。後者は過去の放送内容のファイルなどを掲載。
(オフィシャルサイトには17日夜の時点で17日放送の「スーパー特報」が掲載されているが、14日放送分のファイルは無い。) |