マイベストSF


 マイベストSF

 日本SF作家クラブが『SF入門』(早川書房)のために「SFのプロ」を対象に実施した「オールタイムベスト」アンケートの回答がクラブ・サイト内に掲載されている。

 映画やアニメ、マンガ、TV番組が挙げられていたり、「○○○(作家名)の短編」というズルい回答もあったりして面白い。感受性の鋭い若い頃に出会ったものほど心に強く刻まれるから、オールタイムベスト(≒マイベスト)のチョイスにはおのずとその人の属する世代というか時代が浮き出ているようだ。

 同じ流儀で自分でも「マイベスト」を20点(国内10、海外10)選んでみた。誰に依頼されたわけでもないので「SF観」なんて難しい設問への回答は省略。作品名を列挙するだけではナニなので簡単なコメントを付けておく。

 配列は出会った時系列順であり順位ではない。とはいえ上記の消息で、これはほぼ順位に近いものとなっている。

 思いつくまま書き並べたので、後日また書き直すことになるかも。

2004-03-22

火の鳥
小学4年の頃「未来編」に出会い衝撃を受ける。宇宙、生命、時間、等々の抽象的な観念を意識するきっかけとなった。
ウルトラQ
見終わった後に深い余韻の残るエピソードが多かった。
星新一の短編
星新一にハマった人は、一度は自分でもショートショートを書いてみたことがあると思う。
百億の昼と千億の夜
萩尾望都、秋田書店。魅了されたが意味不明な箇所が多々あるので原作の小説(光瀬龍)も読んでみた。その結果、萩尾望都の才能を強く認識することになった。
銀の三角
萩尾望都の傑作SF長編、早川書房。
孔子暗黒伝
諸星大二郎、集英社。『暗黒神話』はジャンルが微妙なので、明瞭に“SF的”な仕掛けを含む本作を挙げておく。
オール・クリア
神林長平? 80年代末〜90年代前半?にパソコン誌「LOGiN」に掲載された掌編。タイトル、作者名ともに自信なし。検索してみたが確認できず(神林長平の作だとすると今月15日にヒヨコ舎から刊行された『麦撃機の飛ぶ空』に収録されている可能性大なのだが)。
わたしは真悟
楳図かずお。天才の直感は『漂流教室』よりもこの作品の方によりよく表われている、と思う。
カンビュセスの籤
藤子・F・不二雄、中央公論。
パプリカ
筒井康隆、中央公論。『驚愕の曠野』を挙げようかと思ったがSFというには無理があるので、これを。

緑の地球
F・ブラウンの短編。ブラウンは軽妙な作風のストーリーテラーで量産したショートショートには駄洒落オチのようなしょーもないものも多いのだが、本作は意表の結末で重い読後感を残す。『宇宙をぼくの手の上に』(創元推理文庫SF)所収。
銀河パトロール隊
E・E・スミスのスペース・オペラ「レンズマン・シリーズ」の第一作。創元推理文庫SF。
屠殺場5号
カート・ヴォネガット・ジュニア、早川書房。後に邦訳書名は『スローターハウス5』に改題された。人に勧めるなら『猫のゆりかご』を推すが、マイベストはこれ。
私は“無”
E・F・ラッセルの短編。『私は“無”』(創元推理文庫SF)所収。
宇宙大作戦
(TVドラマ) 「スター・トレック」である。
賢者の石
コリン・ウイルソン、創元推理文庫SF。後半からとんでもない展開に。これを読んだ当時はクトゥルー神話(や類似の伝奇物)について知らなかったこともあり、読後しばらく作品世界の不気味な雰囲気に囚われ落ち着かなかった。本作の印象が強烈だったため長らくウイルソンはSF作家だと思い込むことになる。
星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン、創元推理文庫SF。これぞSF、これぞセンス・オブ・ワンダー。
愛はさだめ、さだめは死
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの詩情溢れる珠玉の短編。『愛はさだめ、さだめは死』(ハヤカワ文庫)所収。
空襲
ジョン・ヴァーリイの短編。『残像』(ハヤカワ文庫)所収。本作を発展させた長編『ミレニアム』は未読。『ミレニアム』は映画化されたが不出来な凡作であった。
雨にうたれて
タニス・リーの短編。『アザー・エデン イギリスSF傑作選』(ハヤカワ文庫)所収。“泣けるSF”というとティプトリーの「たったひとつの冴えたやりかた」が有名だが、本作も相当なものだと思う。ツボは人それぞれだから他人に勧めようとは思わないが。

 迷った末に「宇宙家族ロビンソン」(TV)、「アンドロメダ」(映画)、「時計仕掛けのオレンジ」(映画)を落とした。私にとってのSFは、SF小説なのだな。