映画雑記1



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 これはかつてパソコン通信の某ネットに投稿したもの。文章はちょっと手直しした。


 1992-08-31 TV放映される映画の編集 -- 「エイリアン」

 昨夜TV放映された「エイリアン」を予約録画したのだが、受信状態が悪くてモノクロ状態で録画されていた。なにが悲しゅうて今どき白黒で見にゃならんねん!と悪態つきつつ、それでも見る。
 前回の放映の時と声優が違う。思い立って、数年前エアチェックしたVTRを押入れから探し出して頭の方だけ比較してみた。(*1)

 いや〜、以前から感じていたことではあるけど、TVの映画放映の“編集”ってのは凄いね。オリジナルより25分近くも短いんだからあちこちカットされているのは当然としても、同じテレビ朝日の「日曜洋画劇場」なのに、前々回と今回とでは、頭の10分だけでも「よくもここまで細かく変更したな」と呆れるほどカットの仕方が変わっている。(*2)

 凄いと思ったのは、カット(場面省略)に合わせて微妙に(日本語の)セリフもいじっていること。例えば、今回分では「コールドスリープから目覚めた乗員が地球の管制基地と連絡をとろうとして、自分たちがまだ地球のそばにまで帰還していないことに気づく」というシークエンスが全部カットされているため、続くシーンでの「皆も気づいていると思うが、実はまだこの船は地球に帰り着いてない」という船長のセリフから「皆も気づいていると思うが」というフレーズが省略されている、という具合。

 今回分では省略されたシークエンスの名残りとしてノストロモ号が宇宙空間を航行する場面が6〜7秒ほど残されているが、実はこれは、航宙士リプリー(主人公)が南極の管制センターに呼び掛けている場面なのである。日本語吹き替えではセリフ無しの単なる繋ぎカットのように見えるが、音声を2カ国語モードに切り替えて聞くとしっかりリプリーのセリフが入っている。

 場面省略の相違とは別に、音声部分にも細々と違いがある。前回までは冒頭に挿入されていた説明ナレーションが今回は省略されているし(このナレーションはオリジナルにはない。初放映の時に「日本語吹き替え版オリジナル」として作製されたものらしい)、逆に、今回分ではマザーコンピュータの端末室のシーンにコンピュータの音声インターフェースが追加されている、等々。

 もう一つ気づいたことがある。ストーリーと直接関係ない箇所ではかなり恣意的な訳をあてているということだ。7人の乗員が食事しながら雑談するシーンの特に意味のないセリフは前回と今回で違っているだけでなく、オリジナル(英語版)とも対応していない。

 前回、マザーコンピュータの愛称に「おふくろさん」という訳をあてたのはいいセンスだと思うんだが、なぜか今回分では単なる「マザー」になってたなあ。ん〜〜。まあ、これは好みの問題。

 TV局の編集担当者はいろいろ苦労しているんだろうけど……こういうことは思い切りよく手抜きして(笑)、ノーカット無加工でオリジナルを垂れ流して欲しいものだ。 (*3)


(*1)  私の手元にあるのは初放映時=前々回放映時のもの。

(*2)  謎が残った。
 実は、比較対象とした前々回放映時のVTRはノーカット版だったはずなのだ。ノーカット版と25分短縮版を比較すれば食い違いがあって当然。それをなぜ「よくもここまで細かく変更したな」などと感想を書いたかというと、上の箇所を書いた時には「前々回放送分も短縮版だった」と勘違いしていたから。(このアーテイクルを書いているうちに、古い方のVTRはTV初放映のノーカット版の録画だということを思い出した。ちなみに、前回放映時は、これを若干短縮したもの----だから声優その他は初放映時と同じ----を放送していたと思う。)

 なぜそんな勘違いをしたか? 今回放送分の中に、ナゼカ、前々回放送のノーカット版には無いシーンが混ざっていたからである。ノーカット版には無いシーンが短縮版に入っているって、これは一体どういうことだ?

(*3) (1999-04-05 追記)
 この後、CXが深夜枠で洋画の「ノーカット&字幕版&CMによる中断無し」という画期的な放送を始め、やがて他局も字幕版洋画を深夜枠で頻繁に流すようになった。大変喜ばしいことである。しかし、字幕版はずーっと画面を睨んでいないといけないので、しんどい(笑)。

・1992-08-31 記
・1999-04-05 リライト、WEBに掲載
・2002-08-30 書式を他のページと統一(強制改行廃止)


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